CAP定理とは? 一貫性、可用性、分断耐性は同時に満たせない

1. 簡単に説明すると

  • 分散システムの3つの特性を示す
  • 全てを同時に満たすことはできない
  • 一貫性、可用性、分断耐性の略

2. 詳細に説明すると

CAP定理とは、分散コンピューティングにおける基本的な原則を表すものです。この定理は、分散システムが持つことが期待される3つの基本的な性質、すなわち「一貫性(Consistency)」、「可用性(Availability)」、そして「分断耐性(Partition tolerance)」を示しています。そして、この3つの特性を同時に100%満たすことは不可能であるということを意味しています。

まず、一貫性とは、全てのノードが同じデータを同時に見ることができる性質を指します。これは、すべての操作後に、全てのノードが同じデータを持つ状態になることを意味します。

次に、可用性とは、システムが常にリクエストに応答し、ユーザーにサービスを提供することができる性質を指します。これは、システムがダウンタイムなく、常に動作していることを意味します。

最後に、分断耐性とは、システムがネットワークの分断にも関わらず正常に機能し続けることができる性質を指します。これは、例えば通信の途中で問題が発生した場合でも、システムが停止することなく動作し続けることを意味します。

CAP定理の本質的なメッセージは、これら3つの性質の中から2つだけを同時に満たすことができるということです。つまり、もし一貫性と可用性を両方とも満たしたい場合、分断耐性を犠牲にしなければなりません。また、一貫性と分断耐性を両方とも満たしたい場合、可用性を犠牲にしなければなりません。このように、3つの性質の間にはトレードオフの関係が存在します。

この理論は、分散システムの設計や運用において非常に重要な役割を果たしています。システムの要件や環境に応じて、どの2つの性質を優先するかを選択することで、システムの性能や信頼性を最大化することができます。

まとめると、CAP定理は、分散システムの3つの基本的な性質を示しており、これらの性質の間にはトレードオフの関係が存在するということを示しています。この理論は、分散システムの設計や運用の際に、どの性質を優先するかを判断するための基本的な指針として用いられています。

3.具体例

具体例1

例えば、あるオンラインショッピングサイトを考えましょう。このサイトは複数のサーバーで構成されており、全国の多くのユーザーにサービスを提供しています。

シナリオ: セール中の在庫の確認

セールの最中、ある人気商品の在庫が残りわずかとなりました。サイト上ではまだ在庫があると表示されていますが、多くのユーザーが同時にその商品を購入しようとしています。

  • 一貫性を優先: すべてのサーバーが同じ情報(在庫の数)を持っていることを保証するため、ユーザーが購入する前に最新の在庫情報を確認します。しかし、この確認作業には時間がかかり、サイトの反応が遅くなるかもしれません。
  • 可用性を優先: ユーザーが快適にショッピングできるよう、サーバーの応答を速めます。しかし、これにより在庫のオーバーセルのリスクが高まります。
  • 分断耐性: サーバー間の通信が途切れても、システム全体が正常に動作することを保証します。この場合、他の2つの特性とのバランスを取る必要があります。

具体例2

電車の路線図のアプリを考えてみましょう。このアプリは、異なる地域のサーバーから情報を取得しています。

シナリオ: 急な運転変更

ある日、大きな事故が発生し、複数の路線が運転を停止しました。この情報は、利用者に迅速かつ正確に伝える必要があります。

  • 一貫性を優先: 全てのサーバーが同じ情報(運転停止の路線)を持っていることを保証するため、新しい情報が更新されるとすぐに他のサーバーにも伝えます。しかし、これには時間がかかる可能性があり、利用者が最新情報を得るのに待たされるかもしれません。
  • 可用性を優先: 利用者がアプリを快適に使用できるよう、サーバーの応答を速めます。しかし、これにより一部の利用者が古い情報を見るリスクがあります。
  • 分断耐性: ある地域のサーバーとの通信が途切れた場合でも、他の地域のサーバーからは情報を正常に取得します。この場合、他の2つの特性とのバランスを取る必要があります。

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